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建産EYE
2018/12/10
小野組、東京首都圏へ本格進出 長谷工も歓迎、早速施工
型枠業で関西大手の小野組(大阪府門真市)が新たに一局集中化を加速する東京首都圏への進出を果たした。建設業界は東京オリンピックの開催を控え、建設費の高騰に加え、労働者不足が深刻化するなど、厳しい環境下にある。とりわけ下請は一層苦しい状況にあるが、あえて関東進出によって経営の能率化、革新化を一段と促進させる。
同社は関西での先陣を切って生産性向上や機械化への取り組みを進め、高い評価を受けてきた。関東と関西では型枠の施工法や規格など違いがあり、双方を融合させ、経営の合理化に加え、ユーザーサービスの向上を果たすのが大きな目的といえよう。
小野伸二社長=写真=はトップ就任5年目だが、先代社長が築き上げてきた基盤を軸に、型枠工事技術の一層の円熟化に加え、新たな事業展開を当面の課題に掲げている。このため常に経営の刷新に取り組んでおり、厳しい環境下にあって、経営の基盤強化を図ってきた。それもただ単に拡大路線を突っ走るのでなく、“顧客満足”を基本に据え、お客様への感謝の気持ちを大事にする経営姿勢を貫いている。
◆機材センターが完成
今回の東京首都圏への進出に当たって、昨年、埼玉の三芳に1800坪の土地を購入、整備中だった『埼玉機材センター』が今年9月に完成、バックアップ体制を整えた。
大阪には本社・倉庫1800坪のほか、近くに同規模の第二倉庫があり、奈良には4000坪弱のストック材の倉庫があり、東西で三大ストックセンターを確保したことになる。
そこで東京首都圏への進出に当たって、小野社長に今後の取り組みについて伺った。
ーー東京首都圏への進出は実に英断とも映りますが。
「メインの取引先である長谷工コーポレーションが10月から東京(北千住)でマンション工事を着工し、その工事を受注したほか、年末には同社から請け負った2物件(埼玉・越谷)の着工も決まっており、決して無鉄砲の進出ではありません。というのも型枠工事は関西と関東はやり方が違うことから、関東の倉庫にも関西の材料を持ち込んでいます。例えば締め付けパイプは関西が60n㎜角の鋼管なのに対し、関東は丸パイプです。それに関西と関東では締め付け方に加え、取り付けの金物が違い、そのまま持ち込んだのでは現場で弊害が生じます」
◆関西方式の工法採用
ーー工法や規格が随分と違うのですね。解決には頭が痛いですね。
「コストアップになりますが、関西から職人を送り込み、当社のやり方を根付かせます。現地と関西の職人とが一体化し、マン・ツー・マンで習得していただくといったコミュニケーションが大切です。技術や打ち合わせ一つとっても職長が丁寧に行い、首都圏の職人の方々の評判もよく、現場所長にも喜んでいただいています」
ーー進出して短いのに現地での高評価は素晴らしいですね。
「現場所長はほとんどが技術者なので、向上心も強く、関西のやり方を素直に吸収していただいています。技術者はプライドが高く、常にどういうふうにすれば会社にとってプラスになるかを考えています。長谷工もそういう話に耳を傾け、発表する場を設け、支援をしていただいています」
ーー貴社は長谷工物件のシェアが非常に高いですね。
「首都圏の分譲マンションのシェアの多くは長谷工の施工です。関西における長谷工の仕事の約過半数を当社が請け負っており、長谷工の関西協力会の副幹事長を私が務めています。長谷工は多くの物件を持っているので、こちらの要望に見合った物件を用意するなど、大変協力していただいています」
ーー長谷工の建設手順に沿っての敏感な行動が求められますね。
「長谷工自体も関東と関西の施工方法が違っていて、施工方法の統一化を進めており、技術研究所が東京に19年1月にオープンする予定です。そういう取り組みは非常にありがたい。現場での生産性向上の実績が高まれば、賃金の上昇にも結びつきます。それだけに技能、技術向上に一段と力を注いでいきたい」
◆高価資材で収益向上?
ーーコンパネは高価なものを使っておられますが、採算性が落ちませんか。
「確かにマンション専用の使いやすい転用性に優れた高価な材料を使っているのが他社とは違うところです。さらに資材の転用なども考えてプラスチック製の型枠材を数多く使っています。いち早く当社が採り入れ、使い方も先駆者のようになったので、見学によく来られ、資材倉庫や施工方法も見てもらい、東京の方にも知れ渡り、当社の東京進出は現地の同業者に随分と刺激を与えています」
◆東京進出、奥村組も歓迎
ーー奥村組とも懇意にされているようですね。
「奥村組の関西安全協力会の会長をさせていただいていることもあって、奥村組も当社の東京進出を歓迎いただき、東京での見積り依頼をいただいています。シェアが大きいので徐々に広げていくつもりです」
ーー作業現場はもとより、資材置き場も随分、整理整頓され、ムダがない感じですね。
「先代がきれい好きで、常にそれを自慢し、また材料を大事にして、とことん使っています。他社では捨てるような短い資材でも大事に使う先代のやり方が今の職人にも根付いており、皆が材料を大事にしてくれています。短い資材は、国内で当社しか持っていない専用の機械でジョイント用に加工し、長くして使うなど、できるだけムダのないよう工夫しています。材料を繰り返し大切に使うのが型枠の原点です」
ーー高価な材料を使っている秘訣もそこにあるのですね。
「高価だが優れたものを使えば、長持ちします。他社が10回転用しているところを20回使えば、材料が2~3割高くても元がとれます。高くても長く使えば高くないという考え方はほかのことに対しても同じといえます」
ーー職人を随分と抱えておられますが、どのくらいの規模ですか。
「現在、当社の職人の数は直雇400人、外注・材工80人前後、解体120人です。鉄骨化などで職人が減っているが、生き残れる業者を目指し、最善の努力を傾けています。当社は多くの職人を抱えているので、長期安定雇用は経営者の責任ですからね。常に職人に仕事を与えることを考えています」
ーー自民党は若い外国人材を多数受け入れ、長期雇用できる、新しい法律を準備中ですが、貴社は外国人を採用されていますか。
「ベトナムからの実習生を現在15人雇用しており、本社敷地内に所有する賃貸マンションを安い家賃で提供しています。ベトナムからの実習生は長い方で4年位になります。提供している住居はベトナムの自宅よりきれいと喜んで、一生懸命働いてくれています。毎年ベトナムまで出向き、実習生の面接を行っており、今後も増やしていきたい。従業員全員にも実習生を大事にするように指示し、現場に入る前には道具の使い方などを細かく教育しています」
ーーありがとうございました。
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1962年創業。76年本社社屋完成、88年に法人化した。本社所在地・門真市島頭1―1―16。
写真上=本社倉庫
写真下=ジョイント用に加工した資材