



気になるキーワードを入力してください
建産EYE
2014/09/09
新田ゼラチン大阪本社工場内に新鋭の接着剤施設を無事故無災害で竣工
三井住友建設大阪支店 作業所長 川西徹氏
世界のオンリー・ワン企業を目指し、積極果敢な経営を続ける新田ゼラチンの大阪本社工場内に三井住友建設が新鋭の接着剤施設を竣工させました。工場の生産を続行させながら無事故無災害で、トラブル一切なしに計画通り建設を終えた三井住友建設の川西徹作業所長にその建設秘話や今後の建設事業にかける意気込みなどをお伺いしました。
――新田ゼラチンはゼラチンやコラーゲンなどの分野で日本はもとより、アジアでのトップシェアを誇る企業ですが、操業を継続しながら同じ敷地内で工場を建設するというのは、随分とご苦労が多かったでしょうね。
新田ゼラチンは同社のコア事業であるゼラチン、コラーゲンぺプチド、コラーゲンケーシングに加え、接着材の製造・販売を行っており、大阪工場(大阪府八尾市)は、その主力工場です。
今回は接着剤部門の研究・生産機能を集約した施設の建設を行い、先月に無事故無災害で、何らトラブルもなく、順調に竣工させることができ、幸せを味わっています。
同社は100年近い歴史があり、かつては写真フィルム業界が主要需要先でしたが、デジタル化の進展から産業構造が大きく変遷、それに併せて新たな需要先の開拓と新技術を開発し、世の中の変化に機敏に、適応を続ける素晴らしい企業です。日本国内とアジア地域ではダントツのトップ企業で、世界でも第4位です。さらなるグローバル化を推進、世界のトップ企業を目指して邁進しており、今回の接着剤部門の研究所と新鋭工場の建設はその夢を達成するための計画の一つです。そうした未来を見据えた工場建設を手がけられ、大変光栄に感じています。
――達成感もひとしおという感激が伝わってきます。
同工場は医薬、食品をはじめ、きわめて厳しい衛生環境下で操業している職場です。前期も過去最高の業績を達成し、活気溢れる体制下で工事を進めるのですから生産に支障を来すことは許されません。また社員の方々の迷惑や品質に影響を与えないよう細心の注意を払いました。このためスムーズに作業が進められるよう常に段取りを適切に行い、手戻りがないよう心がけました。月に数回行われる同工場の燃料納入などを配慮・優先した工程や仮設計画を練り上げ、かつできるだけ少ない作業員で仕事が回せる形をとりました。工事を開始した頃は、鉄筋工や大工が不足する悪条件が重なったこともありましたが、いずれの問題点も解決でき、きわめて順調に建設が進み、その結果に満足しています。
――貴社の歴史と伝統についてお話しいただけますか。
日本を代表する企業グループの三井・住友それぞれの建設会社として明治に誕生しました。旧三井建設は1887年に西本組として創設し、1952年に三井建設と改称しました。旧住友建設は1876年住友別子銅山の土木建築部門をもとに、前身となる土木方が創設され、1950年に別子建設として独立しました。2003年に三井、住友の2つの建設会社が経営統合し、新しい未来を考える総合建設会社としてスタート、土木・建築双方の強みを生かし、総合力を発揮する体制ができ上がりました。過去にそれぞれが築き上げてきた技術を「プロセス」に活かしながら、お客様の期待に応えるものづくりを提供しています。
――顧客満足を優先させる経営姿勢が十分にうかがえます。御社の経営理念についてお聞かせください。
経営理念として掲げているのは①顧客満足の追求②株主価値の増大③社員活力の尊重④社会性の重視⑤地球環境への貢献―の5つです。これだけではご指摘のようにシンプルですので、各理念ごとに、もう少し詳しい注釈を付けて、より理解し、実行に移しやすいよう配慮しているのが特色といえます。
――所長に共通した仕事に対する誇りをお持ちと思いますが。
三井・住友の両グループに属する唯一のゼネコン社員という点でしょうか。それに恥じない仕事をしなければならないという自負がありますね。それに他社には負けないという気持ちで皆さんやっていると思いますよ。それがお客様の信頼につながっていると思います。
――川西所長ご自身の誇りはどういうものですか。
内勤と外勤の両方の経験があるため、仕事の取り組みから瑕疵対応まで一貫して実行できるというのが強みといえます。どの分野でも言えると思いますが、職場のリーダーとしての強力なマネージメント力が求められる時代に入っています。所長として決断が求められる時に、その経験を生かして、適切に対応できる点にあるといえます。内勤では技術グループ、作業所の人員配置や、建築工事全体の施工管理を統括する建築グループにも所属していました。
――これまでどのようなお仕事をされてきましたか。
静岡県の函南町役場の庁舎、400戸規模の共同住宅大規模改修、老人ホーム、ある企業の貴賓室の保存解体などを手がけてきました。
その中で最も印象的なのは函南町役場で、テラコッタルーバーを使用するなど、外壁のデザインも凝っており、グレードが高く、おもしろい工事でした。新入社員当時には、日本で初の100m超えの超高層マンション現場に配属されたのがとても印象的でした。5日で1フロアが建ち上がっていくのを見て、凄い会社に入れたなと再認識したことを覚えています。また事務所ビルを担当したときは、すべての工種をやらせてもらえ、非常に勉強になりました。今後、大規模な事務所ビルも手がけてみたいですね。
――日本の建築産業を発展させていくためには、現場から見て何が必要だと思いますか。
職人の技術の伝承が危機的状態になっていますので、まずは職人の地位や給料を上げるなど、若い人たちが誇りを持って仕事ができる体制づくりが強く望まれます。そのためには、ゼネコンもダンピング受注をしないようにすることや、発注者側の意識改革も望まれます。国の発展のためにも行政による育成サポートも必要でしょう。
――やりがいを感じるのはどういうときですか。
外部の足場が解体され、建物の全容が見えたときです。完工を実感し、それまでの苦労も消え、満足感と、爽快感に包まれ、この仕事をやっていてよかったと。私は若いころから建物ができていく様子を見たり、ものづくりが好きで建設業に入った関係で、より大きな感動を受けるのでしょうね。
――協力会社や職人のモチベーションを高めるために、いろいろご努力されていると思いますが。
まず第一には働きやすい環境を整えることです。具体的には掃除や片づけを徹底したり、工程や計画を十分練って、手戻りがないようにします。仕事がはかどれば、モチベーションが自然に上がってくるものです。詰所の整備なども重要です。職人さんたちも昔に比べ指示したことをよく聞いてくれるようになりました。
――労働災害防止のポイントはいかがですか。
若手技術者の教育と適正な人員配置です。この現場では新田ゼラチンが昼もラジオ体操をしていましたので、一緒に参加し、KY活動をやって再度注意を喚起し、昼からの作業をさせました。昼休み後に再度、心も身体もリセットさせ、改めて職長から安全指示をすることも無事故無災害で竣工できた一つの要因だと思います。
支店長方針である「4ナイ運動」=①(不安全行動を)黙認しない②(言い訳に)妥協しない③(不安全状態を)放置しない④(昨日まで安全だったからといって)過信しない―も推進してきました。
――専門工事業者や職人に対する要望があれば、お聞かせください。
社長や責任者の指揮命令がしっかり末端まで届く会社は、QCDS(品質、コスト、工程、安全)のすべてで良い結果をもたらすと思うので、そのような統制のとれた会社・組織を目指してほしいですね。
――どうもありがとうございました。
【プロフィール】
川西徹(かわにし・とおる)=1962年生まれ。大阪府出身。京都大学工学部建築学科卒。1986年同社入社。