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建産EYE
2017/03/01
抜群の耐久性と生産性を誇る新開発のFRP製システム型枠の新製品『ガッチ』の普及拡大へ ~㈱フォービル~ 4月7日に展示会
型枠工事業者の㈱フォービル(森本隆之会長)は、型枠業界に革新をもたらすブロック式3次元モジュール化した型枠の新製品『ガッチ』の普及拡大に向けて大きく動き出した。そこで森本会長に『ガッチ』の特色や開発のご苦労、今後の展望などについて伺った=写真。
――型枠をブロック形式の3次元モジュール化するというのは実に画期的な発想ですね。
「従来は合板を一定の寸法に切ったり、貼ったりしていた。これですと4、5回使えば破棄して加工し直す必要があり、面倒な上に、生産性も低く、資源のムダにもなる。そこで、子供のおもちゃのブロックのように組み合わせ3次元で型枠を作り上げたのが大きな特色です。『ガッチ』は素材に耐光性や耐衝撃性に優れ、しかも紫外線劣化にも強いFRP(繊維強化プラスチック)を使用、転用回数200回を目指している。しかも型枠にはモデルチェンジがないので、うまくいけば半永久的に使える。究極のリサイクル効果を発揮できる」
――型枠業界に革命をもたらすのではないかと、評判になっていますね。省資源、省力化、生産性向上、人材不足解消など、どれをとっても素晴らしい。
「FRP型枠パネルとSMC工法の組み合わせは大阪市立工業研究所で公的評価をいただき、商品化へのきっかけとなった。早速、阪南大学の現場で試験使用し、左官屋さんにコンクリート面を検査していただき、OKをいただいた。さらに昨年11月、清水建設近畿兼喜会(北浦栄三会長)の改善事例発表会で優秀賞を受賞するという第三者から純粋に評価をいただいたのも援護射撃になったといえるでしょう。型枠寸法を30㎜単位でモジュール化したことによって、現場での生産性向上を大幅に行えたのが皆さんからの評価につながった。コストも型枠価格の17%削減が可能となった。重量が木製型枠より軽く、しかも事前組立は未熟練工や女性でも作業ができ、27%のコストダウンが図れる。さらにシステムとして完成すれば40%のコストダウンも夢ではないと思っている」
――普及にはどういう取り組みを行いますか。
「既にプロロジス茨木の基礎型枠など12件の現場の使用事例があり、今夏には大型物流倉庫でリース使用も検討している。さらに実績を上げ、NETISの登録を進め、同業他社にも足場のリースのように貸出しをしていけるよう幅広い普及を目指したい」
――コストを下げたら儲からないというのが業界での常識となっていますね。
「そういう固定概念を払拭し、コストを下げて儲ける進取の発想が重要だ。『ガッチ』の構想は20年以上前から持っていた。バブル時に現場での職人不足の状況が続き、PC化等の工業化工法が普及し、このままだと職人は要らなくなり、我々の仕事も減っていくのではとの思いから型枠工事を工業化し、生産性向上が図れないかと考えたが開発資金がなく、踏み切れなかった」
――過去にも合成樹脂製型枠パネルを作られたことがありましたね。
「確かにメーカーと一緒にプラスチック製の型枠パネルを製作したこともあったが、精度が悪く、ポリプロピレンという樹脂を使っていたので、紫外線で劣化した。その後、有限要素解析を用いた型枠支保工の早期解体工法「ピンポイント工法」を開発、ビジネスとして、そこそこの利益を上げることができたので、その資金をもとに、『ガッチ』の開発を進めてきた」
――継続は力なりといいますが、常に前向きな姿勢を貫いてこられた成果といえますね。
「新しいものをつくるのは好きだし、楽しい。アルミ支柱やサポートピン等の開発も手掛けており、新工法の研究・開発にも意欲的に取り組み、3年位前から本格的に着手した。最も基本となる600角の平パネルを設計、有限要素解析した。FRPパネルの製造は機械加工業の溝口さんに相談し、タイにFRP工場を持つ方を紹介してもらったが、その方が途中で行方不明になり、溝口さんが責任を感じて協力いただけることになり、型枠屋と機械加工屋という変わった組み合わせで樹脂パネルを中国で作ることになった」
――『ガッチ』の商品化には新工法の開発がきっかけとなったそうですね。
「FRP型枠パネルは大阪市立工業研究所に相談したところ、SMC工法なら可能とわかり、金型を製作し、成形材料をセットしてプレスするSMC工法で試作したところ成功したので、製品化に踏み切った。90×600、120×600、150×600のパネルを製作、特許と商標を取得した。『ガッチ』は『合う致る』からの命名です。パネルは24種類あり、3面入隅や出隅など難しい形だったが、厚紙を折って形を作っていったら3つの入隅を作れば対応できることが分かり、この簡素化の実現によって商品化に向け前進した」
――型枠は旧態依然とした体制から脱皮が遅れているのですね。
「自動車でも車種間で共通部品を作れば、同じ型で大量に生産できるのでコストも安くなる。型枠は何十年も作り方が変わっておらず、進化がない。図面の寸法に合わせてミリ単位でベニヤを切って製作しているのが現状で、これは洋服屋に例えるなら体にぴったり合わせて作るオーダーメイドで、これでは価格は下がらない。これに対し『ガッチ』はイージーオーダーだが、『ガッチ』の部材寸法を30㎜で規格化し、オーダーメイドを思わせる品質になったのが成功の秘訣だ」
――簡単に聞こえますが、そこまでくるのは実に大変だったでしょうね。
「何度も製作・実用試験を繰り返し、大変な思いをしたが、溝口さんから、『失敗してもあきらめなければ失敗ではない』と勇気づけられたこともあって根性が一層芽生え、失敗を恐れず続けてこられた」
――4月には建設業界を対象とした展示会を開催するそうですね。
「4月7日に開き、PRを展開し、建設業界の多数の方々に技術を知ってもらい、意見を聞いてさらに進化を進めていきたい。一つの専門工事業者として40年近くこの業界でやってきたので、何か残したいという思いはあった。自分が考えた材料をいろんな人に使ってもらい、良い建物を作っていただけたら幸せだ。人手不足の解消にも貢献したい」
――ありがとうございました。
◆「ガッチ」の現場での使用事例◆
プロロジスパーク茨木(2件)(写真上・柱根巻)、彩都富士フィルムRI研究棟(写真下・独立柱型枠)、阪南大学50 周年記念館新築、(仮称)堺物流センター新築、(仮称)イオンモール四條畷新築、生駒善一様共同住宅新築、エステムコート奈良新築、住友化学自家発タービンリプレイス、高槻中学校・高等学校改築、笹田佳昭様共同住宅新築、三井不動産ロジスティックパーク茨木
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1922年森本工務店を創業、事業の本格拡大を目的に2003年法人化し、㈱フォービルを設立。所在地・大阪市旭区赤川2―2―23。