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建産EYE
2015/04/07
鍵と錠一筋、創業100周年を機にさらなる飛躍を
㈱ゴール取締役営業本部長、商品企画開発室室長
葛西明生氏に聞く
鍵メーカー専業のゴールはセキュリティ対策シリンダーの開発を追い求め、技術開発力の向上に邁進、業界を代表する数多くの高品質商品を生み出して100年を経過した。この創業100年を契機に、次の目標に向けて大きな舵取りを開始した。その陣頭指揮を執る就任早々の取締役営業本部長兼商品開発室室長の葛西明生氏にこれまでの経営ノウハウと商品開発への歩みに加え、今後の抱負をお話しいただきました。
――創業100周年を機に営業本部長に就任され、二重の喜びですね。
私は入社して約27年になりますが、今日まで築き上げてこられた多くの先人たちのご努力のお陰で会社が成り立っていることと、100周年という記念すべき年に席を置くことができ、感謝の気持ちでいっぱいです。私は東京オリンピックが開催された1964年に生まれ、当社もこの年に現在の社名である「ゴール」に変更しており、会社の歴史とともに歩んできた感じがして、感慨もひとしおです。
――産業界は栄枯盛衰が非常に激しく、同じ業界に留まるのが一層、難しくなりつつある。そういう厳しい環境下で、1業種を踏襲しつつ堅実に経営を伸ばしてこられたことに驚嘆を感じます。
大阪市福島区で大阪白玉錠製作所として創業したのは1914年のことです。〝安心、安全〟という終焉のない分野に着手したのは創業者の感のよさといえるでしょうね。それに市場にマッチした新技術開発へのチャレンジ精神を持ち続けてきた結果だと思います。
28年谷山製作所に改称し、32年我が国で初のシリンダー錠の製造を開始しました。46年に淀川区の現在地に本社を移転し、59年にも我が国で初めての円筒錠「ユニロック」の製造販売開始、64年社名を㈱ゴールに変更しました。
――技術開発力も素晴らしい。
72年我が国初の電気錠、カードロック及び各種防災システム機器を開発しました。91年7本ピンシリンダーを開発販売。95年非接触型キーリーダーシステムKRSの開発販売、97年ディンプルキー・V18シリンダーを相次いで発売しました。
一方、02年V18シリンダー及びレバーハンドル錠V―LG―5が日本企業として初めて審査の厳しい米国のUL防犯規格の認証を取得し、グローバル化への対応を図りました。
――セキュリティ対策強化への開発姿勢も並外れていますね。
05年にはピッキングなどあらゆる不正解錠に強い防犯構造と1000兆2800億通りもの膨大な鍵違い数を持ち、大規模施設の複雑多岐にわたるキーシステムに対応可能とする、ディンプルキー・グランブィ(GV)シリンダーを発売しました。07年GVシリンダーにシリンダー交換が不要で繰り返しキー交換ができるユニバーサル・キーシステム「UKS2」なども開発してきました。
――企業理念について。
世の中にないものは自分たちで生み出す「創意」、お客様のニーズに応える「誠意」、そして使命感に燃える「熱意」を掲げています。皆さんの安全を守るという使命を強く持ち、安心・高品質で使いやすいもの、意匠的にもよいものを意識しながらものづくりに励み、他社に比べて手堅い会社だと思います。ものづくりもしっかりしたものをつくるということで、ピンシリンダーという鍵穴の中にピンが仕込まれた防犯性の高い機構にこだわって製作してきました。
――1月から現職に就かれたそうですが。
営業本部長に加え、今年から新しく立ち上げた商品企画開発室長も兼務しています。今までは技術部が商品開発や技術的なことはやっていたのですが、これからはさらにセキュリティ度を上げるための電気的・システム的な商材が求められているので、時代の速度に合わせて製品化する必要性が出てきています。従って技術も今までと同じやり方では進捗、加速度面で満足とはいえないので、技術部から人をピックアップして新しい部署を新設しました。世の中の流れやユーザーニーズを的確に捉え、製品開発に一層生かしていこうというのが大きな目的です。
――入社以来、北海道勤務から初の本州勤務、戸惑いも多いでしょうね。
私は入社以来ずっと札幌営業所で営業に携わってきました。生まれも北海道なので雪のない冬を初めて経験しました。カルチャーショックです。人生観が変わりますね。営業所は少人数でしたから、いきなり大所帯で全国を見るようになり、180度違って困惑しています。地方のローカルと大都市圏では市場も違うので、忙しさもけた違いです。緊張感もあり、忙しいですが、非常に楽しい毎日です。札幌では実務や管理もしたり、自分で現場に行って鍵穴を交換するなど商品に触れたり、サービス的な部分も多く、いろんなことを身につける環境にあったのが今はプラスになっています。
――運営方針は。
お客様第一で、お客様のニーズを満たし、満足していただけるメーカーでありたいという思いがありますので、社内的にもどんどん改革している状況です。いわゆるイノベーションですね。3年前に4代目の社長に変わり、会社もいろいろな制度、例えば人事や研修制度、先ほどの新しい商品企画開発室もそうですが、今までにない部分に着手しています。経営方針として人材は宝として掲げ、人ありきという考えから、単に企業の成長はものをつくっているだけではいけない、という概念のもと人材育成に力を入れるようになっています。
――今後の営業展開について。
中期的な売上目標としては100億円を目指しています。現在見込めるマーケットは新築では東北の震災復興と東京オリンピック位ですね。ただその先は他の業種もそうでしょうが、どうなっていくのか見えない状況です。リフォームがかなりのウエイトを占めてくるでしょうね。
――一般錠の耐用年数は10年ぐらいといわれていますが。
家電などの電気製品の耐用年数は大体5~10年位ですが、鍵は壊れない限り交換しなくてよいとの恒久部材としてのイメージがあります。事実、なかなか壊れるものではないし、我々も良品づくりに専念してきました。技術力の賜物で、堅牢なものをつくって提供しているという自負はあります。交換のマーケットはほしいですが、耐用年数を推奨したところで、建物が老朽化しても錠前は使えるうちは使いますからなかなかそういうマーケットは見込めません。特に当社の製品は他社に比べて品質に優れていますからね。現在ホテルはカードロックが主流となっておりますが、当社の製品で毎日使っていても20年位持つ商品もあります。
――新商品、商品開発について。
ディンプルキー「GPシリンダー」を今年2月に発売しました。これを強力に売り込んでいくつもりです。100周年記念商品として自信を持って提供できる製品です。当社の製品には、従来より防犯性や耐久性に優れたピンシリンダーを採用しており、6本シリンダーが標準仕様でしたが、これからはGPシリンダーがスタンダードなシリンダーとなります。今後は、堅牢で防犯性・操作性に優れたディンプルキーにシフトしていきます。
GPシリンダーは防犯性に優れ、ピッキングなどの不正解錠はほとんど不可能で、キーの複製も困難にしています。3方向に21本のピンを配列することにより鍵違いも多くとれ、マスターキーピンの採用により大規模で複雑多岐なキーシステムも可能です。差し込む向きもフリーなリバーシブルで操作がしやすく、価格は従来の6本ピンシリンダーと同等なので経済的です。これをどう拡販・展開していくかですね。3月に東京で開催されたセキュリティショーにも出展しましたが、かなりの反響があり、同業者の注目も集めました。ゴール=ディンプルというイメージをお客様に持っていただけるような戦略を今後展開していくつもりです。
このほか、新製品「スマートリーダーパスカルSRSシステム」は、マンション向けのエントリーシステムで、ハンズフリーを鞄やポケットから取り出すことなく近づくだけでドアを解錠できます。宅配BOXやエレベーター及び駐車場との連動も可能で、リモコン操作もできます。
――本社内にショールームを開設しておられますね。
当社がこれまで開発してきた商品を一堂に展示しています。実際に鍵に触れて、その操作性などを確認でき、導入後にどのような入退室が可能となるかを実体験することができます。
――錠前業界の今後の展望について。
一般の戸建住宅の玄関ドアにまでカード式やタッチ式、ウォークスルー式の電気的な商材が要求されているので、今後伸びるマーケットです。新築マーケットは明らかに落ち込むでしょうから、これからはリフォーム市場に向けての商材をどれだけ提供できるかもポイントです。そしてアジアなど海外マーケットの展開も始めています。当社は幸い台湾に工場がありますので、その強化もしていきたいと思います。どんな舞台でも勝負ですから、どのような状況の中でも切磋琢磨していくことが、最終的にはお客様へのサービスにつながると思います。お客様の要求をどれだけ満たせるか、お客様第一が信念です。
――どうもありがとうございました。
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