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建産EYE
2015/04/01
企業の視点に立ったアドバイスを大阪府中小企業診断協会
公的機関や一般企業に勤める企業内診断士をはじめ、独立して事業を行う方まで幅広く集う大阪府中小企業診断協会、その中にあって業界で活躍する副理事長の風谷昌彦さん、岡崎永実子さんに、建設業におけるソフト面の取組み方を伺った。
【協会について】
当協会は診断士全体の約70%が企業内診断士として働いており、残り30%ほどが独立しています。また独立してコンサルティングやシンクタンク的な事業をスムーズに行える団体として大阪中小企業診断士会が存在します。
主な事業としては、会員サポートや全国の診断協会との橋渡し業務などの活動を行っています。さらに協会内では19の研究会と5つの交流会があり、お互い情報交換等を行い、診断士のスキル向上を図っています。
【現在の建設業を取巻く環境をどのように感じておられますか】
これまで請負業者は、発注者からの請負業務を行っていましたが、一定規模以上の事業者では建設業の定義に縛られず取組んでいるよう感じます。
まだまだ多くの建築会社では箱物中心の仕事を変えるとこまで至っておらず、周りの環境変化に対応出来ていない部分も見受けられます。また東日本大震災や東京オリンピックを控え関東圏を中心に人手不足による、コストの増加や建築費用の高騰が生じていると捉えています。
【人材不足により発生した問題対策とは】
一般社員を多能工化して、職人の数が少なくても対応出来るようにすることや、協力事業者の職人の方々の時間単位の工程管理をすることで、作業や労働の無駄が出来ないよう指示出来る体制をとることが人材不足問題への有効な対策のひとつとなります。
【無駄を省くためには具体的にどのような点に注意】
業務プロセスと言われる部分です。大きな流れとしては見積・受注・工事・請求となり、この一連の流れが適切に出来ているかチェックする必要があります。もし出来ていないと工事遅延が発生し、遅れを取り戻すために工事品質の低下やコスト増加に繋がるので、プロセスを見直すことが必要です。
その為には、コスト管理・工事の手配・元請事業者と協力業者との適切な打ち合わせをしつつ、適時進捗に合わせ管理することで円滑に進めることが重要です。
【会社の成長に向け、どのようなアドバイスを行いますか】
経営管理が適切に出来ている会社は少数。実際の例でいえば、ある元請会社の下に付いて仕事を請負う下請け企業は、元請企業の仕事量増加と共に人を増やすだけで経営をしていました。景気の良い時はそれでもよかったのですが、一旦景気が悪くなると元請企業の要請を受け、低価格で受注せざるを得ない。そのため自社の強みがコストだけに依存してしまうと価格競争に陥ってしまう。そうならないためにも、具体的な戦略を持った経営を行う必要がある。企業には例えばこの仕事を依頼するならここという特徴が必要であり、自社は何でお客様に貢献出来ているか考えて、そこから発生するビジネスチャンスを見いだしながら成長を図ることが重要です。
最初に、お客様がお金を払ってくれるのはどこかといった企業の価値を把握し、その部分を伸ばすという考え方が一般的であり、他の業界でも使われる手法です。
【ビジネスチャンスをより確実なものとするためには】
取引先に自社の強みを尋ねて、自社と取引先の答えが一致すれば、自社の強みを理解していることになります。しかしほとんどの中小企業では、なぜ取引先から自社に注文が入ってくるのか本当の理由を理解しておらず、一生懸命営業しているからと答えることが多いです。発注者側の立場からすると積極的な営業だけではなく他の要因もあって発注しており、その要因こそが会社の価値となります。企業が認識している部分はほんの一部で、自分も相手も気づいていない良さが沢山あるにも関わらず中々気づいていない。たとえばまれに営業しなくても以前に施工したお客様から突然受注が入ったりすることがあります。その場合、お客様にとってなにか良かったことがあるから発注するので、そのあたりを深く掘り下げ、他に同じ事例が無いか探っていくといったことを行うと自社の強みが分かってきます。
これを機会に、自社の強みを見直してみようと思ってもらえたら幸いです。
【強みをより活かすためには】
私達は仕事をする上で、目標を持つように言っています。昨今、営業競争にさらされているなかで、コスト競争以外に自社の強みを活かすための意識改革を進めています。その為には必要なのは所属企業への愛着であり一員としての自覚。また仕事をする上での一体感としての自覚といったことを大切にしています。
例えば現場周りの清掃をして地域貢献するなどコスト以外に、仕事に誇りを持って貰えるようにするといった取り組みです。そのためには人材教育を行い、高い技能+高い社会人意識を身に付けるようにすることが求められます。経営者がこのような人材を求めているということを適切に従業員に発信できるように促しています。また同時に、それらに対する評価を行うシステムづくりについてアドバイスをおこなっています。
【昨今増加傾向のPFI事業を、協会では、どのように捉えていますか】
PFIの基本的な考え方は悪くなく、事業の効率化からすると、これまでの行政にない民間手法を活用することは、市民にとってもプラスになると思います。しかし導入にあたり評価が難しい部分もあります。例えば導入しなくてもよいのに、わざわざ民活と言ったり、行政側が単なるコストダウンの為に導入しているケースもあるように思えるからです。
今後、導入した結果が見えてくるので、活用の仕方を感覚論でなく、具体的に判断していけるのではないかと思います。また指定管理者制度などの活用も含め、一つの時代の流れと思いますが、行政にノウハウが蓄積されないので、行政主導で運営を行おうとする場合はノウハウ不足により困難になるおそれがあると危惧しています。
【診断士の立場からすると】
PFIに参画する際には事業収益とコストの確認を行っています。建物の場合、最初のイニシャルコストは問題ないが、維持管理に掛かるランニングコストを含めて30年~40年間の事業として成り立つかチェックしています。また利用率の根拠に至る考え方などを総合的に勘案し、事業として実現可能かアドバイスしています。
我々は企業様の立場なのでPFIで行うことは構わないのですが、後々大変なことに手を出したとならないように、事業見通しの実現性等をチェックします。
【建設業界が抱えている課題をどうすべき】
どの会社も自社の利益を追求しすぎて、その分下請業者の置かれている環境が厳しくなっているように感じます。そうなると下請業者が倒産して、職人不足に陥るので、いくら大手の会社が生き残ったとしても、結局自分に跳ね返ってきます。職人を増やす全体的な仕組みはどうあるべきか考えるべきではないでしょうか。
業界全体を一つと捉え、共存共栄である意識を持ちながら、経営改善や体質改善が進めば業界が今後も成長していくのではと考えています。
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