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建産EYE
2015/01/08
ユーザーに一番身近なデザイナー集団
日本商環境デザイン協会
関西支部長 長町志穂 氏
日本商環境デザイン協会は、デザイナーが世の中に認知されていない時期に、商業施設の店舗をデザイナーの手によりデザインすることを啓蒙し、職能の確立を目指して設立された。設立から一昨年で50周年を迎え、新たなステージにどのように進むのか、関西支部長の長町志穂さんにお話を聞いてみた。
【どういった方の集まりなのか】
所属している会員は、一級建築士の資格保有者の人もいますが、基本的に内装業の団体であり、インテリアデザイナーの集団。具体的な仕事は、個々の店舗や、物販店、展示会のデザインから、百貨店の中の化粧品・ジュエリー売り場など、世の中の嗜好に合わせて、3年~5年と短いスパンで内装を改装するジャンルの仕事です。いかにトレンドをキャッチして反映させることが出来るかが重要で、クライアントの想いを目に見える形にすることを生業とします。
【建設業における協会の役割】
例えば大型施設を建てるのに、調査や設計を担当するのはコンサルタント会社で、施設の施工を担当するのがゼネコンなど。たいしてインテリアデザイナーの集団は一番最後の、人とのコミュニケーションに関わるデザイン。エンドユーザーと コミュニケートする部分であり、全体の大骨格を形成するより、ユーザーに一番身近なデザインを行うことが役割。
【協会の取り組みや活動】
当協会は、設立50周年を迎えたことで、これまでデザイナーの地位向上を図って来ましたが、これからは一段上のステージに進むべく、シフトしていく時期にきている。そこで本部も含め私達が掲げていることは、社会にどうデザインで貢献していくかということ。今、協会として力を入れていることにSODA事業があります。具体的には小学校での実践的なデザイン教育などで、空間を創る体験を通して、良い住環境や町などを意識してデザインすることでそれらの環境が良くなる事を子供達に知ってもらいたいと考えています。最近は「しつらえ」に対する教えや、住環境に対して親から子への教えが稀薄になっていることから、子供達に空間の素晴らしさや豊かさを教えていく必要があり、職能団体である協会として教育分野に注目し、全国で開催している。空間デザイナーによる空間の使い方や「しつらえ」文化の教育などが一つの新しい方向性だと考えている。このほか、他のデザイン団体と共催による月1回のデザインサロンにて、ゲストを呼んでトークショーを開催など。またJCDデザインアワードの活動は団体として最も有名な活動であり、国内外から応募作品が集まる。その優秀作品を集め、展覧会なども開催している。
【協会の目指す方向性とあり方】
新たなステージへと歩むにあたり、良い店舗を沢山デザインして日本中の空間に、上質なデザインの店舗を増やすこと。一方で教育とか職能そのものを活かした活動が出来ればと思っています。ただ会員が減っているので、若いインテリアデザイナーを中心に参加して欲しいと切望している。若い人は団体に加入しなくても、今はインターネットがあり独自にネットワークを形成してます。顔を見なくても情報交換出来る時代に、わざわざ会合に出席し情報交換したがるのは年輩の方達で、そこに若い会員は増えない。今、業界団体は存在意義が問われる時代に来ていると思う。改めてどのような存在意義があるのかが大事なことと思います。
【協会としてのアピール】
最近業界団体に入る若い人が減っている。業界団体はメリットがあるから入るのではなく、1人1人のスキルを社会に活かすため、1人で出来ない事をみんなで共同作業するボランティア活動だと思います。例えば個々の事業者さんが小学校へインテリアの授業を教えに行くということはなかなかないですが、協会として特別授業を実施することは可能です。それは「何々協会の誰々さん」ですという信頼感によるものであり、社会に対する信頼感の獲得だと思います。このほか海外交流事業のEast Gatheringでは、韓国、中国、シンガポール、台湾などのメンバーで構成されており、アジアの同業者とネットワークを組んで情報交換をしている。国際交流活動は団体だから可能な活動であり、個人での活動は難しい。今後もアジアの仕事は増えるし、JCDデザインアワードのエントリでも海外の案件ばかりです。日本人のデザイナーが担当している物件も、場所は上海など海外のパターンが増えている。ニーズをキャッチするという意味でも、アジアの情報が必要になると思います。その時、協会に所属していると情報交換も出来、国際活動を通して縁も広がります。なので自分たちの自力を上げるためにも、プロとして店舗デザインに関わる上で向上するためにも、セミナーを開催したり知識を広げるために協会を利用してほしい。
【建設業界に期待したいこと】
20年にオリンピックを控え、元気良く何か良い物を作る方向に全体が動いて欲しいと思います。良い物とは50年後、100年後に残る質のもの。建設業界においても長く不況が続き、何でも安く作ることが蔓延し、それは業界の人だけが悪いのではなく、世の中の流れもあり施主側も安く仕上げることに傾いていたので、残す価値のある建築物がすごく減ってしまった。建設業界に対して100年残るような建築物が次々に建ってほしい。安価なものと違い長く残る建築物を、素材も含め、本物で出来ていること。近代建築物が残っているのは材料も含め全部本物で出来ていて、誰もが残したいと思ったから残ったわけです。当協会の役割は中身を作ることなので、上等なものの中に質感のある中身を作っていく。そういったものが増えていく事を期待したい。